エグゼクティブサマリー

グリーンソフトウェア がもたらす環境と社会に対する利点とは別に、ビジネス上の様々なインセンティブがあります。 企業は 、ブランドの回復力から従業員の採用・定着に至るまで、サステナビリティ対策の実施によって多くを得ることができます。また、ESGのコンプライアンス、コスト削減、および開発の効率化など、グリーンソフトウェア自体に直接結びつくインセンティブもあります。

資金調達、リソーシング、およびグリーンソフトウェアの原則の適用により、企業は以下のことが可能になります:

消費者にアピールする:

環境に配慮した企業を支援したいと声を大にする消費者にとって、企業の社会的責任は重要です。しかし、Wharton School of Business(ウォートンビジネススクール)の調査によると、消費者のサステナビリティへの関心と、小売業の経営者の見解には大きな乖離があります。同じWhartonの研究では、「ベビーブーマーからZ世代まで、あらゆる世代の消費者が、サステナブルな製品により支出したいと思うようになっている」と述べています。 経営者が現在の消費者傾向を把握し、事業の継続性を維持したいのであれば、サステナビリティはその戦略の中で必要な要素になるでしょう。Xboxなどの人気コンシューマ製品にもカーボンアウェア機能が搭載されるようになり、消費者の期待も高まっています。

また、消費者は、グリーンソフトウェアを含む、より環境に優しいテクノロジーに対して、より多く支出することを望んでいます。 GSFのエグゼクティブディレクター、Asim Hussainが行った調査によ調査によると、ソフトウェア実践者の72%が、ネットゼロで、100%カーボンフリーエネルギー(CFE)を使用したクラウドコンピューティングサービスに、より支出したいと考えているとのことです。具体的には、「5%多く支払う」が23%、「10%多く支払う」が28%、「25%多く支払う」が18%でした。

より広い意味では、2021年のIBMの調査の結果、50%の消費者がサステナブルなブランドやサステナブルな製品に対して、より多くの支出を望んでいることが示されています。2022年に16,000人の消費者を対象に行われたより最近の調査では、過去12か月間に49%が、サステナブルな、または社会的責任のあるブランド製品に対して、平均59%のプレミアム(割増金)を支払っていることが分かりました。

企業やその他の組織は、スコープ1、2、3の排出量を削減、測定、および報告するためのツールを必要とするため、グリーンソフトウェアは、組織がネットゼロ目標を達成するための要因にもなります。

社員を定着させる:

SOGS調査によると、ソフトウェア実践者の92%が気候変動に懸念を抱いているとのことです。従業員、特にミレニアル世代や若い世代にとってサステナビリティは重要であるため、企業にとって従業員の採用や定着に欠かせない要素になると思われます。

サステナビリティは、従業員の採用・定着のための重要なポイントです。Fast Company社が実施した2019年の調査 によると、ミレニアル世代の40%が、「過去に、サステナビリティのパフォーマンスが高いという理由で雇用主を選んだことがある」と回答しています。また、30%の回答者が、サステナビリティのパフォーマンスが低いことを理由に退職を選択したと答えています。

技術業界では、気候関連の知識や有能な人材が強く求められていて、サステナビリティは成長分野です。職場でグリーンソフトウェアのイニシアチブを支援することで、組織のリーダーは、優秀な従業員を惹き付け、維持することができます。

規制を遵守し、投資家にアピールする:

規制の変化により、サステナビリティは重要な考慮事項として位置付けられています。ソフトウェアに焦点を当てた法律の普及は、過去10年間で4倍に増加し、2021年には、40%の国が何らかの規制を導入していると言われています。また、グリーンソフトウェアの正式規格 も登場しています。企業は排出量を測定して報告しなければならず、ESGのコンプライアンスでは計算の正確性が求められます。投資家の関心も高まっており、投資先企業についてのBlackrockの評価では、ESGのコンプライアンスが1つの要素になっています。投資家がグリーンソフトウェアを投資のプラス指標と考える中、グリーンソフトウェアの原則を適用し、アプリケーション全体で排出量を測定する企業は、資金調達の増加に向けてより有利な立場に立つことができます。

63%のCEOが、サステナビリティを最優先事項として評価していません。企業は、サステナビリティ対策への投資のROIを警戒するかもしれませんが、 2022年のMorningstar社の報告書 によると、ESGスコアが最も高い企業の収益率は33%で、より広い米国市場と比較して8%高いことが分かりました。サステナビリティ対策には、明らかにROIがあります。ガートナー社の研究によると、2020年には、85%の投資家が投資においてESGの要素を考慮していることが判明しています。

グリーンソフトウェアは、市場の差別化要因にもなっています。AWS は、2024年初頭に、スコープ3のGHG排出量に関するデータを顧客が自由に閲覧できるようにする予定です。報告についてのこのような透明性は、消費者と投資家の両方にとって期待されると予想されます。2024年には、EUの企業サステナビリティ報告指令により、企業に環境データの追跡が義務付けられる予定です。

ソフトウェアをより環境に優しいものにするためのビジネスケースがありますアクセンチュアの2022年版報告書「Uniting Tech and Sustainability(技術とテクノロジーの統合)」によると、IT戦略をサステナビリティ戦略や事業戦略と統合している企業は、株主総利回りで競合他社を大きく上回っていることが分かりました。

コストを削減する:

グリーンソフトウェアを、より大きなサステナビリティイニシアチブに組み込むことで、企業のエネルギーコストを削減することができます。

ThoughtWorks社は、企業がグリーンクラウドの最適化を利用してビジネスコストを削減する方法についてのケーススタディとして、Etsy社を紹介しています。「柔軟なクラウドベースのインフラに移行することで、Etsy社は、主要なアイドルタイムとそれに伴うエネルギー消費量を削減することができました。Etsy社は併設のデータセンターからクラウドに移行したため、ビジネスの成長と同時に、その合計エネルギー消費量が推定13%減少しました(2018年の7330MWhから2019年の6376MWhへ)」。 最適化により、計算コストを削減することができます。

サステナビリティ対策によるコスト削減の別の例として、「Savills社は、ダブリンにあるオフィスの1つのエネルギー効率を改善するために、気候テック企業のIES社に評価を依頼しました。IES Consulting社は、モニタリングベースのコミッショニングアプローチと自社のiScanデータ分析プラットフォームを用いて、ビルのシステムを正しく運用することでエネルギー効率を向上させました」。 Savills社は、実施した変更の結果、年間108,000ユーロの節約と、年間302トンのカーボンフットプリントの削減を実現する予定です。

グリーンソフトウェアの原則は、ユーザーエクスペリエンスの一部でなければなりませんアクセンチュアは、思慮深く環境に配慮したUX設計が、ユーザーエクスペリエンスを合理化すると同時に、ビジネスコストを削減できることを明らかにしました。GreenOpsとFinOpsには強い相関関係があります。グリーンソフトウェアの慣行は、コンピューティングリソースの最適化および効率的な利用につながり、ひいてはITの所有コストを削減することになります。

開発を効率化する:

ネットゼロの未来には、グリーンソフトウェアが不可欠です。グリーンソフトウェアは、開発、展開、使用、メンテナンスの各段階で効率改善を図るため、コードとオペレーションをより効率化することが証明されています。より環境に優しく、より効率的なソフトウェアは、様々なコンポーネントがより良く、より速く動作することで、より優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出します。ゾンビ、つまり使われていない技術、不要になったコード、または冗長なデータを削減することで、開発を効率化し、運用コストを削減して、排出ガスも削減します。Holly Cummings氏は、クラウドゾンビが環境に与える無駄な影響を排除するためのいくつかの戦略を概説しています。データセンター内の余剰電力を最小限に抑えることで、コストを削減し、運用を効率化できます。

IBMによると、「グリーンコーディングの使用は、プログラマーに複雑なインフラを簡素化する権限を与え、最終的にはソフトウェアエンジニアが書くコードの量を減らし、時間を節約することができる」とのことです。

グリーンソフトウェアは、CEOの注目を求めるSOGS調査によると、26%の回答者が、サステナビリティやグリーンソフトウェアを具体的に、自身の公式な役割の一部であると回答しています。グリーンソフトウェアのための明確なビジネスケースがありますが、このようなイニシアチブは、経営幹部の十分なサポートがあってこそ成功するものです。63%のCEOは、ビジネスと気候にとって緊急性が高いにもかかわらず、サステナビリティをまだ高い優先事項として評価していません。CEOが今すぐ行動を起こせば、投資家や消費者などへのアピール、コスト削減、従業員の定着、気候変動に着目したイノベーションの促進において、一歩先を行くことができるでしょう。